NOTOFUE(ノトフュー)

L’Atelier de NOTO

池端 隼也

Toshiya Ikehata

Profile

1979年、輪島市生まれ。大阪の辻調理師専門学校を経て、フレンチの名店「カランドリエ」で修行を開始。2006年に渡仏し、ブルゴーニュにある星付きレストランで研鑽を積む。帰国後は大阪で出店予定だったが、帰省した際に「能登の食材の素晴らしさ」を目の当たりにし、急遽地元での出店を決意。2016年に「ラトリエ・ドゥ・ノト」がオープンした。

「ラトリエ・ドゥ・ノト」が大切にしていることは?

能登の素晴らしさをお皿の上で伝えること。素材の味はもちろん、見た目でも能登を感じてもらえるよう心がけています。あとは生産者さんと過ごす時間も大切。オープンからこれまで、少しずつではありますが生産者との関係を築いてきました。漁師さんが魚を獲る時点から、農家さんが野菜を育てる段階から、私たちの料理は始まっています。そういった意味でも、生産者さんが身近にいる能登は恵まれていると思います。

なぜ、NOTOFUEの活動を始めようと思ったのですか?

私がこの場所でお店を開こうと思ったのは、生産者さんたちが元気に働いて、質の良い食材を提供してくれるからです。でもこの環境はいつまで続くのか、これから何十年、何百年先へと繋いでいくためにはどうしたら良いのか。そう考えたときにシェフと生産者が一丸となって、課題に取り組むべきだと思ったんです。

これまでに「資源の枯渇」を危惧する経験はありましたか?

能登は限界集落が多く、30年後には人口が今の半分になるのではないかと言われています。どこの生産現場でも最前線で働くのは高齢者の方たち。はたして数十年先はどうなっているのか…。実際に僕がお店を開いた当時と比べても、食材を取り巻く環境は変わりつつあります。たとえばカニの値段は倍以上になっているし、異常気象で農作物が採れなくなったという話も聞きます。もちろん生産者さん自身も収穫量や漁獲量が目に見えて減っていることは分かっています。でも、自分たちの手だけではどうにもできないという現状なんです。

NOTOFUEを通じて、創造したい未来像はありますか?

食材の背景をしっかり伝え、価値を見出すのも私たちシェフの役割。生産者がどれだけの手間と時間をかけて作り上げたものなのか。そのひとつひとつにまで目を向けて、労力に見合った価格で取引ができる環境を整えるのも、大切な仕事だと思っています。能登には少ない生産量でも、質の高い食材を地道に作っている方がたくさんいます。良い循環の中で作られる、本当の意味でのオーガニック。そういった生産者さんを応援しながら、大切な資源を未来へと紡いでいきたいですね。

最後にシェフご自身の意気込みを聞かせてください。

私たちがやるべきことは、「このままではいけないのは分かっているけど、なにをどう手をつけていいか分からない」という料理人や生産者の道しるべになること。ひとりでは難しくても、多くの人が集まることでできることもあります。将来の不安を感じる料理人に方向性を示し、問題を抱える生産者の受け皿となりたい。それがメッセージとしてさまざまな人へと伝われば、資源を取り巻く環境は良い方向へと変わっていくと信じています。